銀行は中小企業に対し、一部の制度融資を除き、融資実行にあたって経営者が連帯保証人になることを要求します。保証人となれば、会社が融資の返済ができなくなった時、代わりに返済しなければなりません。

保証人と連帯保証人は何が違うのか

保証人と連帯保証人には違いがあります。連帯保証人は単なる保証人と違い、催告の抗弁権、検索の抗弁権がありません。

催告の抗弁権とは、債権者(銀行)が保証人に保証債務の履行(債務者である会社の代わりに返済)を要求した場合、保証人は債権者に対し、まず主たる債務者(融資を受けた会社)に債務の返済を要求するよう主張できる権利です。

検索の抗弁権とは、保証人が債権者に対し、債権者がまずは主たる債務者の財産に取り立てを行わなければ保証債務の履行を拒むことができる権利です。

銀行の融資において経営者がなる連帯保証人の場合、単なる保証人と違い、催告の抗弁権、検索の抗弁権がありません。そのため銀行は、会社が融資を返済できなくなった時、連帯保証人に対しいきなり取り立てることが可能となります。

経営者は連帯保証人になるが第三者保証人は銀行融資で要求されなくなった

以前は、経営に関係のない第三者を連帯保証人(第三者保証人)とすることがよく行われていました。会社が銀行へ返済できなくなった時、第三者保証人は経営に関係ないのにいきなり取り立てを銀行から行われたものでした。それが問題となり、信用保証協会保証付融資、プロパー融資(信用保証協会の保証が付かない融資)において、次の通達が示されました。

中小企業庁からの通達(2006年3月)

「中小企業庁では、信用保証協会が行う保証制度について、平成18年度(2006年度)に入ってから保証協会に対して保証申込を行った案件については、経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを、原則禁止とします。」

→信用保証協会保証付融資で第三者保証人を原則禁止。

金融庁からの通達(2011年7月)

「金融機関が企業へ融資する際に、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする旨の監督指針を改正を実施。」

→プロパー融資で第三者保証人を求めないことを原則。

これらの通達により、経営に関係のない第三者保証人に銀行から取り立てが行われることによる問題はかなり少なくなりました。

なぜ銀行は経営者に融資の連帯保証人となることを要求するのか

では、なぜ銀行は経営者に対し、連帯保証人になることを要求するのでしょうか。3つの理由があります。

(1)経営者への規律付け

資金繰りが厳しくなり、会社が倒産して銀行へ融資の返済ができなくなっても、経営者が豊富な資産を持ち続けることができる場合。経営者の中には自分の資産が傷まなければ銀行への返済ができなくなってもかまわないと考える人が出てくることでしょう。会社の倒産に備え、役員報酬を高額に設定するなど会社の資産を経営者個人に移そうと考える経営者も出てくるかもしれません。このようなモラルハザードが起こることを防ぐため、銀行は経営者に連帯保証人となるよう要求します。

(2)融資を受ける会社の信用力の補完

特に、業績や財務内容が芳しくないなど会社の信用力が弱い場合。経営者個人にある程度の資産があれば、会社が銀行へ返済できなくなった時に連帯保証人として経営者個人の資産から返済してもらえると考え、銀行は融資を行いやすくなります。

(3)会社の財務諸表の信頼性担保

銀行が融資審査を行うにあたって、判断材料として決算書の内容は重要です。そこで銀行から融資を受けるために決算書の内容を改ざんして粉飾決算を行い、業績や財務内容を良く見せている会社も中にはあります。ただ銀行は、その決算書が粉飾決算を見破ることはなかなかできません。決算書は粉飾ではない、正しいものであると経営者に責任を持たせるため、銀行は経営者に連帯保証人となるよう要求します。

銀行融資で経営者が連帯保証人となるには2つの形がある

経営者が、自分の経営する会社が銀行から融資を受ける時、連帯保証人となりますが、その保証の仕方には2つあります。限定根保証、特定債務保証です。

他に包括根保証という方法がありましたが、は2005年4月より禁止されました。包括根保証とは、銀行が会社に対して現在および将来の融資、全て保証することを言います。無制限の保証ということで、保証人にとっては酷であるとして禁止されました。

限定根保証と特定債務保証を見てみます。

(1)限定根保証

限定根保証には次のような決まりがあります。

ⅰ.極度額が定められる

極度額の定めのない根保証契約は無効となります。例えば銀行が会社に対し行う融資の5000万円を極度額とすれば、現在および将来に行われる融資を足して5000万円までを保証するということです。

ⅱ.期限が定められる

根保証をした連帯保証人が、今後いつまでに実行される融資を保証するか、根保証契約で決められます。その期限は、保証の契約書で定める場合には契約日から5年以内の日、契約書で定めない場合には契約日から3年後の日となります。

(2)特定債務保証

1本ごとの融資に対して個別に保証を行うことを特定債務保証と言います。

例えば2020年9月1日に行う3000万円の証書貸付による融資の連帯保証人となるといいうように、特定の融資に対しての保証です。証書貸付や当座貸越の融資の場合に行われる保証の方法です。証書貸付の場合に銀行と交わす金銭消費貸借契約書、当座貸越の場合に銀行と交わす当座貸越契約書に、連帯保証人として署名捺印を行います。

なお同じ銀行に同じ保証人が特定債務保証と限定根保証、両方を行う場合。特定債務保証は限定根保証に上乗せされるものであり、包含するものではありません。

例えば限定根保証で極度額5000万円の保証人となっていて、これとは別に証書貸付3000万円の融資を受け特定債務保証として保証人となった場合。他に手形貸付4000万円の融資を受けていたとして、証書貸付3000万円+手形貸付4000万円=7000万円の融資額のうち、限定根保証の極度額である5000万円だけの保証人ということにはなりません。証書貸付3000万円は限定根保証5000万円の範囲外であり、7000万円全ての保証人ということになります。