あなたの会社が、毎月の損益が赤字であったり、少しの黒字しか出ていなかったりして資金繰りが厳しいのであれば、足を引っ張る原因が何かあるはずです。その原因を見つけ出し改善していくことが、黒字化につながり、そして資金繰り改善につながります。足を引っ張る原因をあぶりだすには次の4つの観点があります。

  1. 一つの案件ごとに、どれだけ利益が出ているのか。
  2. それぞれの営業マンごとに、どれだけ利益が出ているのか。
  3. 一つの店舗や事業所ごとに、どれだけ利益が出ているのか。
  4. 一つの部門ごとに、どれだけ利益が出ているのか。

それぞれを見ていきます。

1.一つの案件ごとに、どれだけ利益が出ているのか。

例えば、建設業であれば一つの工事ごとに、システム開発業であれば一つの開発ごとに、利益を計算します。このように、一つの案件ごとに利益を計算できる事業を行っている会社の場合。一つの案件ごとに売上・原価・経費、そして利益を計算し、赤字になっている案件がないか、見ていきます。

案件を受注する前、顧客に見積もりを出すにあたっては、それぞれの案件で原価・経費がどれだけかかるか計算し、そこに利益を上乗せして見積もりを提示します。そして大事なことは、案件の終了後、見積もり時に計算した利益に比べ実現した利益がどうだったのか、比較し振り返ることです。

例えば建設業では、見積もり時の原価・経費の予測が甘いため、思ったより材料費や外注費、人件費などかかってしまうことがあります。一つの案件が終了したら見積りと実績を比較して振り返り、次に生かしていくようにします。

また工事の途中で顧客から追加工事を要求され、追加金額をもらわず気軽に追加工事を引き受けてしまう会社があります。追加金額をもらわずに追加工事を請けてしまうと、売上は増えないのに材料費や外注費、従業員の人件費が増え、利益が少なくなり、下手したら赤字になります。こう考えると、追加金額は顧客から必ずもらうべきことが分かります。

ある建設業A社の事例です。A社は、工事期間4カ月で合計8000万円の売上となる工事を受注しました。材料費・外注費・人件費合計6000万円を引いて2000万円の利益をとることができます。なおA社は、施主から工事を受注した元請けの一次下請けとなりました。そして工事中、元請けが追加工事をA社に要求してきて、A社は追加金額をもらう交渉をしないまま、追加工事を進めてしまいました。後で追加金額の交渉を元請けにしましたが聞き入れてもらえませんでした。

さらに悪いことに、A社の外注先の従業員が途中で辞めてしまい、そのままでは工事が進まないため別の外注先を追加しました。このような無償の追加工事と追加の外注費により、この工事は見積もり段階で2000万円の利益を見込んでいたところ、最終△500万円の赤字を出してしまいました。ただしA社はこの痛い経験を、その後の工事に生かすようにしました。そうしたところ、次の工事からは見積もり段階とほぼ変わらない利益を得られるようになりました。

2.それぞれの営業マンごとに、どれだけ利益が出ているのか。

卸売業、リフォーム業、事業者向けのサービス業など、営業マンの営業活動の成果により売上が左右されやすい事業を行っている会社の場合。それぞれの営業マンごとに、どれだけの売上、粗利益を稼いでいるのか計算します。営業マンが安売りして粗利益が少なくなれば、会社の利益は少なくなります。一方でそれぞれの営業マンに支払っている人件費を計算します。人件費には給与・賞与の他、会社が負担する法定福利費(社会保険料・労働保険料)、通勤費も含めます。

そうすると、それぞれの営業マンが人件費に見合った稼ぎをしてくれているか、それとも人件費に見合った稼ぎをしてくれていない赤字社員なのか、分かります。赤字社員に対しては、黒字社員になれるよう指導していきます。その具体的方法は下記記事をごらんください。

ほっておくと倒産してしまう会社へ。経費削減で聖域にできない人件費

3.一つの店舗や事業所ごとに、どれだけ利益が出ているのか。

飲食店や小売業など、店舗ごとの損益を計算できる事業を行っている会社であれば、店舗ごとの損益を計算します。また事業所が複数あり、それぞれ独立して売上・利益を稼いでいる会社であれば、各事業所の損益を計算します。

会計ソフトには部門別会計という機能がついています。その機能を使い部門別の仕訳入力を行うことで、各店舗や各事業所の損益を計算できます。

部門別会計を行うと、どの店舗や事業所が赤字であるか分かります。赤字店舗や赤字事業所を黒字転換できるように、集客・営業の強化、値上げや原価削減など粗利率向上策、経費削減などを行っていきます。それで黒字化すれば良いですが、赤字が止まらず黒字化の見込みがなければ、赤字店舗や赤字事業所は撤退します。

撤退を決断しなければならない時、経営者は「今までこの店舗に2000万円投資してきた。また撤退費用で500万円も必要。だから撤退できない。」というように考え、撤退の決断ができないことが多いです。しかし毎月赤字を垂れ流す店舗や事業所は、その後、会社にもっと多くの損失をもたらしてしまいます。黒字化の見込みがない店舗や事業所は、思い切って撤退します。

4.一つの部門ごとに、どれだけ利益が出ているのか。

複数の事業を行う会社であれば、1つの部門ごとにどれだけ利益が出ているのか計算します。会計ソフトの部門別会計の機能を使います。

複数の事業が社内に存在する会社であれば、資金繰りが厳しいのであれば、足を引っ張る赤字部門が存在する可能性があります。赤字部門がどの部門なのか、そしてその部門で毎月どれだけの赤字があるのかを見るために、会計ソフトの部門別会計の機能を使い、部門ごとの損益を計算します。そして赤字部門が分かったら、黒字化への対策を行います。黒字化の見込みがなければその部門から撤退します。

撤退について経営者は「今まで1年やってきた事業だから、今さら後に引けない。」「今まで3000万円つぎこんできた事業だから、今さら撤退できない。」というように考えがちです。しかし赤字部門を継続すると、さらに多くの赤字を会社にもたらしてしまいます。思い切って撤退します。損切りです。

また資金繰りが厳しい会社を見ると、やらなくてもよい新事業をやっているケースをよく目にします。建設業が新事業で飲食店をやったり、運輸業が新事業でネットショップでの化粧品販売を行っていたり、です。新事業が儲かっていればよいのですが、多くのケースでは、新事業は赤字を出し続けています。中には経営者が新事業ばかりに自分のエネルギーを注ぎ、本業をおろそかにしたことで本業の売上が落ち、赤字を出してしまっているケースもあります。

創業者は事業意欲が旺盛なタイプが多く、次から次へと新しい事業に手を出したくなるものです。ただ本業で十分に利益が出ていて、本業の利益から新しい事業に投資するのが、あるべき姿です。本業で利益が出ていないのに新事業に手を出すべきではありません。また銀行が本業に対し行った融資で得た資金を、新事業に使ってしまっているケースもよく目にします。本業そっちのけで新事業に資金を多くつぎ込むと、本業の資金が不足してしまい、本業の足を引っ張ることになります。

足を引っ張る原因を探り、対策を行うことが黒字化、資金繰り改善につながる

資金繰りが厳しい会社は、下記4つの観点で見ていくことで、会社の足を引っ張る原因が分かります。その原因をつぶしていくことで利益が上がるようになり、資金繰りは良くなっていきます。

  1. 一つの案件ごとに、どれだけ利益が出ているのか。
  2. それぞれの営業マンごとに、どれだけ利益が出ているのか。
  3. 一つの店舗や事業所ごとに、どれだけ利益が出ているのか。
  4. 一つの部門ごとに、どれだけ利益が出ているのか。