銀行へ融資を申し込んでも、審査が通らず新たな融資を受けられない。そのような会社が一方で、多くの融資を受けていて返済負担が大きい場合。このままでは返済ごとに手元の現金が減っていき、やがて資金不足になります。このような会社は、すでにある融資の返済を減額・猶予することを検討すべきです。融資の返済を減額・猶予することをリスケジュールと言います。

融資の一本化の効果を考える前に、まずはリスケジュールのことを知ってください。

リスケジュールを行うと、資金繰りは改善します。例えば、事業で利益を出すことにより手元に残る現金、つまりキャッシュフローは年間0(事業で利益を上げていない)、一方で毎月の返済金額が100万円、年間で1200万円を返済している会社を考えてみます。

この会社は年間で、キャッシュフロー0円-返済額1200万円=△1200万円、これだけの現金が1年間で減少します。この状態を放置すると、やがて資金不足になります。例えば、現在250万円の現金(預金も含みます)があれば、新たな融資を受けられない中、月100万円の返済を行うので、100万円×3カ月=300万円で、3カ月後には資金不足になります。将来、資金不足となることを防ぐために、すぐに銀行とリスケジュールの交渉を行います。

毎月100万円の返済を、銀行でリスケジュールに応じてもらうことで毎月の返済を0にできた場合。これ以上、銀行へ返済し現金が減っていくことは止まりますので、将来資金不足になることを防げます。なお利息は今までどおり支払い続けます。

リスケジュールを行わず融資の一本化で対応するとどうなるか

融資の返済額を減額する方法として、リスケジュールの他に、融資の一本化があります。先ほど例に挙げた会社が、融資が2本あり、うち1本は融資残高が2000万円、残り返済回数40回(40カ月)、毎月50万円の返済とします。もう1本は融資残高が1000万円、残り返済回数20回(20カ月)、毎月50万円の返済とします。この2本の融資を合わせて月100万円の返済です。

この例の会社は、事業で利益を出すことにより手元に残る現金、つまりキャッシュフローが0で、一方で月100万円の返済があります。現在の現金残高は250万円で、新たな融資を受けられなければ3カ月後には資金不足になります。

この場合、経営者がリスケジュールは避けたいと考え、借り換えにより融資の一本化を行って返済額を減らすとどうなるでしょうか。

2本合わせて3000万円の融資を、同額の3000万円で借換えして一本化し、60回(60カ月)の返済回数としたら、今まで2本の融資合わせて毎月100万円の返済であったものが毎月50万円(3000万円÷60カ月)の返済になります。このように複数の融資を一本化することで毎月の返済額を減らすことができます。

しかし融資の一本化の手法を使って返済を減額することは、銀行から新たな融資を受けられる会社だけが考えてよいことです。

この例では、2000万円と1000万円、合わせて2本3,000万円の融資が、1本3000万円の融資に変わっただけであり、上乗せ分の融資はありません。融資を一本化しても手元の現金が増えるわけではありません。

この例で銀行が1000万円上乗せしてくれて4000万円で借り換え、一本化できるのであれば、毎月返済額は4000万円÷60回=約66万円となります。借り換え前は月100万円の返済であったので、この場合でも毎月の返済額は減額され、さらに1000万円の現金を増やすことができます。また銀行が借り換えで1000万円増額してくれたということは、まだ銀行から新たな融資を受けられるだけの信用がこの会社にあるということで、今後の資金繰りも当面は心配ないでしょう。

一方、借り換え時に銀行が融資金額を上乗せしてくれない場合。この例では2本合わせて3000万円の融資を一本化し3000万円で借り換えることにより、毎月100万円の返済が50万円に減額されます。しかしこの例の会社は、事業で利益を出すことにより手元に残る現金つまりキャッシュフローは0です。現在の現金残高が250万円あり、毎月の返済額が借り換えによる一本化により100万円から50万円に減額されれば、借り換え前はあと3カ月で資金不足となったものが、あと5カ月で資金不足となる状態に変化します。しかし銀行から新たな融資を受けられないのであれば、資金不足となるまでの期間が5カ月に伸びただけで、結局は将来、資金不足となることに変わりありません。

ここまで述べたように、銀行から新たな融資を受けられない会社が、一方で既存の融資の返済負担が重くこのままでは資金不足に陥ってしまう場合。融資の一本化という手法では不十分です。融資の一本化ではなくリスケジュールを行い、例の会社では毎月100万円の返済を月5万円や0にするなど、思い切って返済額の減額や猶予を行うよう銀行とリスケジュール交渉するべきです。

融資の一本化が有効になる会社、意味がない会社とは

銀行から新たな融資を受けられる状態の会社であれば、融資の一本化は毎月の返済を楽にする有効な手段です。そのような会社は借り換えによる一本化により返済額を減額できる上、上乗せ分も含めて借り換えられ、また今後も銀行から新たな融資を受けられることを期待できます。そのような会社はリスケジュールしなくてよいです。

一方、銀行から新たな融資が受けられない会社の場合。既存の融資の返済負担が重いのであれば、融資の一本化により返済の減額を行っても抜本的な資金繰り改善にはなりません。融資の一本化を行ってもいずれ資金繰りに詰まってしまうため、一本化ではなくリスケジュールを行うべきです。