月次資金繰り表を作ると、次のメリットがあります。

  1. 将来の資金不足を防ぎ経営の安全性を高める
  2. 過去の資金繰りを振り返ることができる
  3. 資金繰り表を作っている会社を銀行は高く評価する

資金繰り表のメリット1 将来の資金不足を防ぎ経営の安全性を高める

資金繰りがいつでも問題なく回るよう、資金繰り管理を日ごろから行うことは重要です。資金繰り管理のポイントは、現金残高(預金も現金として考えます)が将来マイナスになることを、事前の対策で防ぐこと。そしていつでもできるだけ多くの現金を保有するよう心掛けることです。資金繰り管理のためには6カ月~1年後までの毎月末の現金残高を予測した資金繰り表をふだんから作るようにし、将来の現金残高をいつも意識した資金繰りを行うことです。そうすると将来の資金不足を防ぐことができ、経営の安全性が高まります。

では具体的に、どれぐらいの現金を常に保有すると良いでしょうか。保有すべき現金の水準は会社の規模によって違いますので、月商を基準に考えます。月商とは、年商つまり年間の売上高を12カ月で割って計算します。資金繰りを安全に行うには、最低でも月商1カ月分の現金を常に保有すべきです。理想は月商の3カ月分ですが、そこまで現金を保有できる会社はなかなかないので、まずは月商1カ月分の現金を常に保有できることを考えた資金繰りを行ってください。なお、現金が多くなる時期もあれば少なくなる時期もあるものですが、少なくなる時期でも月商の1カ月分以上の現金を保有する資金繰りを行ってください。

月商の1カ月分の現金を保有することは、1カ月分の売上代金が全て入ってこなくても資金不足とはならないということです。事業を行っていく中でよく起こるのは、売上代金が回収できないことです。売上代金の回収が販売の後であったり、手形で受け取ることがあったりする会社であれば、売掛先の倒産や資金繰り難により売上代金が回収されない事態も想定しておかねばなりません。見込んでいた現金が入ってこない中、資金をすぐ手当てしようとしても間に合わないです。

得意先の倒産や資金繰り難による売上代金の回収不能ということは突然起こるものです。そのことに備え、現金は多めに保有しておいた方が良いです。月商1カ月分の現金を常に持っていれば、不測の事態があっても対応できます。

資金繰り表のメリット2 過去の資金繰りを振り返ることができる

資金繰り表は、将来の予定だけでなく過去の資金繰り実績も表すことができます。前月の仕訳入力が完了したら、そのデータから前月分の資金繰り実績表を作る決まりにしておくとよいです。

資金繰り表の中は、経常収支・設備収支・財務収支と分かれます。過去数カ月~1年の資金繰り実績表を集計し、経常収支がマイナスであれば、事業を行うことで現金が減っていくという、実態は赤字と言えます。早急に経営改善を行わなければなりません。放置しておくとさらに現金が減っていってしまい、資金不足が近づいてきます。

特に粉飾決算を行っている企業では実態の損益が見えないことがあります。そもそも粉飾決算は行ってはならないことですが、粉飾決算を行っている企業では、粉飾ではない実態の損益を見えるようにすべきです。そうしないと経営者が自分の会社が実態でどれだけ利益が出ているか、もしくは赤字であるか分からず、今後の経営改善策を考えられません。

粉飾決算の会社であれば、銀行に提出する決算書や試算表は黒字に見せていても、過去の資金繰り実績表の経常収支はマイナスになります。粉飾決算で赤字は隠せても、資金繰り実績表では隠せないのです。経常収支がマイナスであったら早急に経営改善して黒字化する必要があります。

このように過去の資金繰り実績表も作っている会社であれば、過去の資金繰りを振り返ることができます。

資金繰り表のメリット3 資金繰り表を作っている会社を銀行は高く評価する

銀行は融資を申し込んできた会社に、決算書だけでなく、試算表と月次資金繰り表も提出するよう要求することが多いです。これに加えて経営計画書の提出を要求することもあります。

試算表や資金繰り表を銀行に提出できない会社、つまりこのような資料をふだんから作っていない会社は、融資審査が通るのが厳しくなってしまいます。

銀行が融資審査を行うには、企業の状況を詳細に把握する必要があります。それを決算書だけでなく、試算表と資金繰り表によっても行います。資料が企業より提出されなければ、銀行は融資審査を進めにくくなります。また試算表と資金繰り表を毎月作っている会社は、日ごろから経営管理、資金繰り管理がしっかりできている会社であると見られます。そういう点でも銀行からの評価は高くなります。

また資金繰り表を使い、いつの時期に、なぜ融資が必要なのか銀行に説明すると、銀行はその会社が融資を必要とする理由が分かり、融資審査を進めやすくなります。資金不足となる時期がいつで、その時に融資を受けられれば資金繰りは回ることを資金繰り表で説明すれば、銀行に対する説得力は高くなります。

資金繰り表を作らず、今月資金が足りないことが今月になって初めて判明し、あわてて融資を申し込まれても、銀行は困ってしまいます。融資の審査期間は余裕を持って2カ月は見ておきたいのが銀行の本音です。また融資を行って今月の資金繰りはしのげても来月以降どうなるのか、銀行は資金繰り表を見なければ把握できません。資金繰り表がなければ、銀行は融資を行ってもすぐに資金が足りなくなるのではと心配します。

このように、資金繰り表を作っていない企業は、銀行からの融資に対しても、不利になってしまいます。

まとめ 資金繰り表を作ることで、メリットを享受しよう

以上、月次資金繰り表を作ることによるメリットを3つ述べました。メリットは下記3点でした。

  1. 将来の資金不足を防ぎ経営の安全性を高める
  2. 過去の資金繰りを振り返ることができる
  3. 資金繰り表を作っている会社を銀行は高く評価する

資金繰り表を作る作業は大変ですが、資金繰り表を作ることで資金繰り改善の対策を考えることができ、また銀行の融資審査も有利になります。そのようなメリットを考えると、資金繰り表を毎月作れるようにしたいものです。