筆者のところに相談に来る資金繰りが苦しい会社の経営者を見ると、経営者がこんなことをやったから資金繰りが苦しくなった、という原因があります。事業が赤字であることは資金繰りが苦しくなる一番の要因ですが、その他に、資金繰りを悪化させるいろいろなことを、経営者がやってしまっています。下記8つは、資金繰りが苦しくなりたくないのであれば、経営者は絶対にやってはならないことです。
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその1 知人や関係会社にお金を貸す
たまたま手元に現金預金が多くある時に、自社は資金繰りが回っていると勘違いしてしまい、知人や関係会社にお金を貸してしまう経営者がいます。知人の会社が苦しくて知人に泣きつかれると、お金がある時についつい貸してしまうのです。関係会社の資金が足りない時も同様、簡単に貸してしまいます。
会社の現金預金は、売掛金の回収が多かった時や銀行から借入れした直後など多い時期があれば、支払いが多かった時など少ない時期もあります。資金繰り表で資金の管理もせず、ただ手元に現金預金が多くあるからと知人や関係会社にお金を貸してしまうことは、後の資金不足につながり、大変危険です。
また、知人や関係会社にお金を貸す会社を銀行は嫌がります。銀行が出した融資を知人や関係会社に流したと思われ、銀行から信用を失い、二度と融資を受けられなくなることもあります。
詳しくは下記の記事をお読みください。
社長!知人や関係会社にお金を貸付したら資金が回らなくなってしまいますよ
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその2 会社のお金と経営者個人のお金を混同する。
会社のキャッシュカードを普段から持ち歩いている経営者は多いです。ただしこれは、会社のお金と経営者個人のお金とを一緒にすることで、資金繰りにおいて大変危険なことです。
経営者が外出先で会社の経費を現金で支払う時の正しいやり方は、会社のキャッシュカードから引き出した現金ではなく、経営者個人の現金で支払い、後で使った分を会社から個人へ振り込んで精算する、というやり方です。キャッシュカードを持ち歩くと、会社の預金を自由に引き出せてしまうので、自分の給料以上に生活費を使ってしまいがちです。個人の預金より会社の預金の方が、多くの金額が入っているものです。給料の手取り以上の現金を会社のキャッシュカードから引き出せば、会社に資金がなくなり、資金繰りは苦しくなります。なおキャッシュカードから引き出すのではなくても、給料や経費精算以外で会社から経営者個人の口座に振り込むのも同じことです。
詳しくは下記記事をお読みください。
なぜ中小企業の決算書の貸借対照表の現金勘定は、ありえなく多くなるのか
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその3 経営者が無駄使いをする。
会社と個人のお金をしっかり分けていたとしても、会社の経費を経営者が無駄使いすれば、当然、資金繰りは苦しくなります。
銀行は交際費をもっと減らすよう言ってくるものですが、交際費をたくさん使ってしまう経営者は多くいます。交際費が今後の売上増加など役に立つのであればよいですが、経営者が楽しい思いをしたいだけというのであれば、交際費をほとんど使わないようにすべきです。他にも、社員へおごりまくる、分不相応に立派はオフィス、無駄に高級な社用車、経営者が楽しみたいだけのリゾート会員権、などが経営者の無駄使いとしてよく見られるケースです。
現金預金が豊富にあり、事業でたくさん利益が出ている会社であれば多少の無駄使いは良いです。そうでなければ、経営者の無駄使いが会社の資金繰りを苦しくさせます。経営者の中には、会社を経営すればお金をたくさん使ってもよいものだ、と勘違いしている人もいます。銀行から借入れできれば、その勘違いはいっそうひどくなります。しかし銀行は永遠に貸し続けるわけではありません。銀行が貸さなくなった時、今まで無駄使いしてきたツケが一気に出てきます。
詳しくは下記記事をお読みください。
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその4 借入れしないで設備投資をする、運転資金で借入れして設備資金にあてる。
建物を建てたり機械を買ったりするなど、設備投資を行う場面は、経営しているとよくあるものです。設備投資には大きな資金が必要です。設備投資の資金を用意するには銀行から借入れする必要があります。ただ、融資を受けないで自己資金で設備投資を行ったり、設備資金ではなく運転資金として銀行から融資を受けたりする経営者がいます。
設備投資を自己資金で行うと、当然、資金繰りは苦しくなります。また設備資金ではなく運転資金として銀行に申し込んで融資を受けても、資金繰りは苦しくなります。
設備資金の融資と運転資金の融資の最大の違いは、返済期間の長さです。設備投資は長い時間をかけて効果を発揮していくものですし、また設備投資の金額は大きくなりがちです。そのため銀行は設備資金の融資を長い返済期間としてくれやすいです。返済期間5~15年、場合によっては20年返済にしてくれることもあります。一方、運転資金は、設備資金より返済期間は短くなります。設備資金ではなく運転資金で融資を受けると、後の資金繰りが苦しくなります。
また、設備資金を運転資金として融資を受けてしまうと、運転資金で借りられる枠をその分、埋めてしまいます。ちなみに信用保証協会は月商の3カ月分、日本政策金融公庫は月商の1カ月分を、企業に運転資金として融資を出せる上限の目安としています。設備資金で借りられるのに運転資金で借りると、その枠を埋めてしまうことになり、後で運転資金の融資が必要となった時、支障をきたしてしまいます。
詳しくは下記記事をお読みください。
設備投資を、融資を受けずにもしくは運転資金で借入れして行ってはいけない
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその5 詐欺にあう。
資金繰りが厳しい経営者には、詐欺にあっている人がよくいます。なぜ詐欺にあってしまうのか。資金繰りが厳しい中、一獲千金をねらってしまいやすいことが原因の一つです。
経営者が引っ掛かることの多い詐欺の一つに、融資詐欺があります。「あなたの会社にお金を貸せるようになった。」というFAXが送られてきて、申し込んでしまうと、言葉巧みに、お金を逆にとられてしまいます。
他にも、融資をしてくれる金融会社があるから審査書類の作成のために着手金をほしいと言って、多額の着手金をとられて連絡をとれなくなる詐欺、お金を預けてくれれば高い配当を毎月払うと言って、お金が返ってこない詐欺、などがあります。
実際の詐欺の事例は、下記記事に書きましたのでお読みください。
詐欺にあって750万円を失いさらに資金繰り悪化した経営者の話
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその6 無駄な新事業に手を出してしまう。
本業で利益を上げられず赤字なのに、新事業に手を出してしまう経営者がいます。
経営者のところには、多くの人が儲け話を持ってきます。しかし、持ってこられた儲け話が1~2年後に実際に儲けにつながったケースはめったにありません。
儲け話を持ってくる人は、自らそれを行えば自分が儲かるはずです。しかしなぜ自分でやろうとしないのか。儲け話を持ってくる人には、次の2つのパターンがあります。
1つ目は、儲け話を持ってくる人に資金がないパターン。この場合、経営者に資金を出させて、儲け話を持ってきた人が自ら事業を行います。経営者は近いうちに売上が増えていくと期待しながらいつまでも売上が上がらず、給与や経費だけはどんどん使わせて会社の資金繰りが苦しくなるケースをよく見ます。
2つ目は、儲け話はそれを持ってきた人が儲かるだけで儲け話に乗っかった経営者は損をしただけというパターンです。画期的な新商品を開発し、今後数年で売上が何十億円と上がるから投資してほしいと言って、経営者に多額の投資をさせます。結局、その投資は実を結ばず、投資した資金が返ってこないことはよくあります。ただし投資をされた方は、その新商品、新事業はでっち上げで進める気がなく、実は自らの会社の資金繰りに使ったり、現金を持って逃げてしまうことも多いです。
本業の事業が儲かっていないのに、新事業に手を出してはいけません。
詳しくは、下記記事をお読みください。
社長!余計な新事業に手を出してしまうと資金が回らなくなってしまいますよ
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその7 社員に横領される。
社員による横領は、中小企業にとって日常茶飯事です。中小企業は大企業と違い、内部管理体制はゆるくなりがちです。また中小企業はどうしても給料水準は低くなり、優秀な社員を採用しにくいです。その中で、モラルが欠けた行動を社員にとられてしまうことがよくあります。真面目な社員でも、ふとしたきっかけで「ばれなければいいや。」「後で返せばいいや。」と横領をしてしまうものです。真面目に見える社員ほど、気をつけなければなりません。
社員に横領されると、資金繰りは当然、厳しくなります。そして横領が分かった後の、経営者の精神的ダメージは大きいです。
詳しくは下記記事をお読みください。
社長!社員に横領されてしまうと資金が回らなくなってしまいますよ
経営者が資金繰りを苦しくする8つのことその8 無駄な自社ビルを持つ
経営者の満足と、対外的な見栄のために、必要もない自社ビルを、銀行から融資を受けて手に入れる経営者がいます。銀行も融資を増やしたいですから、そのような会社に積極的に融資を行います。
自社ビルは、それ自体で利益を生み出すものではありません。本社の機能は、賃貸のオフィスで十分に果たせます。わざわざ自社ビルを手に入れる必要がありません。
自社ビルを手に入れるためには銀行から借入れすることが普通です。自社ビルの金額は大きいため、当然、借入金は大きくなります。業績が良いときはなんとか返済できても、業績が悪化して返済と利息の負担が重くのしかかっている会社は多くあります。
詳しくは下記記事をお読みください。
社長!無駄な自社ビルや自社店舗を持つと資金が回らなくなってしまいますよ
以上、資金繰りが苦しくなりたくなければ経営者が絶対にやってはいけない8つのことを見てきました。
資金繰りが苦しくなる一番の原因は事業が赤字であることですが、それに加えてこれら経営者がやってはいけないことのどれかが重なって、資金繰りがますます苦しくなっている会社は多いです。本業の改善に力を入れず、余計なことに手を出してしまう経営者が多くいます。経営者がやってはいけないことに気を付ければ、資金繰りがいっそう苦しくなることは少なくなります。
経営者は、まず本業の利益が上がるように力を入れなければなりません。余計なことにエネルギーを使ってはいけません。本業に集中すること、これが、資金繰りが良くなることにつながります。