返済期間は、融資審査で決められる条件の一つです。企業が銀行に融資を申し込む際、希望の返済期間を伝えることはできますが、審査により、希望の返済期間とならないこともあります。
また資金使途により、適した返済期間があります。例えば機械を購入する設備資金の融資であれば、機械は長い年月、稼働して事業に貢献するので、返済期間は5年~10年と長い返済期間となることが通常です。一方、従業員へ賞与を支払うための賞与資金の融資は、賞与が年2回の会社であれば、次の賞与の時まで半年で返済することが通常です。
銀行融資の返済期間は2つに区分けされる
返済期間は、銀行では短期融資・長期融資という区分けがあります。返済期間1年以内の融資を短期融資、返済期間1年を超える融資を長期融資と言います。短期、長期、どちらかで、銀行が行う融資の方法が異なってきます。
融資の種類には、手形貸付、証書貸付、手形割引、当座貸越があります。返済期間が1年以内の短期融資では、手形貸付の方法をとることが原則です。返済期間1年を超える長期融資では、証書貸付の方法をとることが原則です。
短期融資は返済期間が短いことから融資が行われる頻度が高く、手形貸付という、企業が銀行に借入用手形を差し入れるだけの簡単な方法がとられます。一方、長期融資は、証書貸付というしっかりした手続きを行う方法がとられます。証書貸付では、金銭消費貸借契約書への会社の署名・捺印の他、連帯保証人の署名・捺印が必要となります。また会社と連帯保証人の商業登記簿謄本・印鑑証明書の提出も、融資が行われるごとに必要となります。
なお手形割引という方法は、企業が販売先などから受け取った手形を銀行に買い取ってもらう資金調達方法で、手形が割引された後、手形の支払期日が来て銀行が回収できるまで通常は1年以内なので、短期融資の区分に入ります。
当座貸越という方法は、決められた金額(極度)の中で企業がいつでも借りたり返したりできる方法で、短期で借りたり返したりすることから短期融資の区分に入ります。
融資の返済期間が長い場合と短い場合、どちらが銀行の審査は通りやすいか
なお、短期融資の方が長期融資より審査は通りやすいです。返済期間が短い方が、融資した資金が返済されない貸倒れリスクが小さくなることが一番の理由です。
また短期融資では、融資で出た資金が何に使われるか、そして返済の元手は何であるか、分かりやすいことが多いです。
例えば建設業などでよく行われる、外注費や材料費の支払いが先に行われ売上代金の回収が後になる間をつなぐつなぎ資金は、短期融資で行われ、売上代金の回収をもって返済に充てます。アパレル業のように在庫を仕入れる季節と販売する季節がはっきりと分かれる業種では、在庫を蓄える季節に融資が行われ、在庫が売れる季節に返済する、季節資金という融資方法がよくとられます。賞与資金や、法人税等の納付のための納税資金の融資も、次の賞与や納税が発生するまでの6カ月(法人税等では中間納付が6カ月後に行われるとして)での返済が基本です。このように短期融資では、出た資金が何に使われるか、返済の元手が何であるか、分かりやすいため銀行は融資を行いやすいです。
一方で長期融資は、返済の元手が見えづらいです。長期融資は、企業が利益を上げて稼ぐ現金で返済するという考え方をします。しかし、利益を上げ続けられるかは将来になってみないと分かりません。実際に多くの中小企業では、返済をまかなうだけの現金を稼ぐことができず、既存融資を返済していく中で預金残高が少なくなっていくので、新たな融資を受けて預金残高を回復させる必要があるのが実情です。
結局、銀行からの融資の返済期間は長い、短い、どちらが良いのか
なお融資を受ける企業としては、返済期間は長ければ長いほど、返済はゆっくりとなり資金繰りは楽になります。なるべく長い返済期間の希望を、融資を申込む際に銀行に伝えたいものです。経営者の中には「銀行から返済期間は10年可能と言われたが、早く返してしまいたいから3年にする。」と考える人もいます。しかしこの場合、返済期間は10年として借りるべきです。
返済期間を短くして融資を受けて、その後、思った通りの利益を出せず返済が困難となってしまったら大変です。返済期間は長くとり、その後、利益がたくさん出て預金が多くなりすぎてしまったら繰り上げ返済すればよいです。返済期間は長くできるのであればできるだけ長くする、これは、銀行融資でのセオリーです。