資金使途違反とは、銀行へ融資を申し込む時に伝えた資金使途、つまり資金の使い道を守らず、融資で得た資金を別のことに使うことです。

資金使途違反とみなされると、資金使途違反した融資の一括返済を銀行から要求されたり、一括返済とまでいかなくてもその後、資金使途違反した銀行から融資を受けられなくなったりします。また資金使途違反した融資が信用保証協会保証付融資であったら、信用保証協会の中では資金使途違反した会社として記録され、どこの銀行でその後、信用保証協会保証付融資を申し込んでも、審査が通らなくなってしまいます。

資金使途違反かどうかを銀行はどう確認するか 設備資金の融資の場合

設備資金の融資では、融資を受けた後、その融資で購入した設備の実物を見せるよう銀行から要求されたり、設備代金の支払いした領収書の提出を要求されたりします。もしそれで、融資申し込みの時に伝えていた資金使途とは別のことに使ったことが分かったら資金使途違反となります。また、融資を受けた後に作成された決算書で、その設備が固定資産台帳に載っているかどうか確認されることもあります。

資金使途違反かどうかを銀行はどう確認するか 運転資金の融資の場合

運転資金の融資の場合。賞与資金や納税資金で申し込んだ融資では、賞与や納税に資金を使ったかどうか。特定の商品をまとめて仕入れることを資金使途として申し込んだ融資では、その特定の商品の仕入に資金を使ったかどうか。このように、融資を申し込んだ時に銀行に伝えたとおりに資金を使ったかどうか確認されます。

ただし運転資金では、銀行に融資を申し込む時に資金使途を、特定の取引に対する支払いのためと限定せず、漠然と「商品仕入資金」「買掛金支払資金」「諸経費支払資金」というように伝えることもよくあります。この場合、融資で得た資金を資金使途どおりに実際に使ったか銀行から確認されないことも多いものです。

なお信用保証協会保証付融資で、資金使途が運転資金で「商品仕入資金」「買掛金支払資金」「諸経費支払資金」というように漠然としている場合。融資が入金された預金口座から融資で得た金額が全て出たことを銀行に確認され、全て出たことをもって資金使途どおりに使われたとみなされる実務がよく行われます。例えば信用保証協会保証付融資で、資金使途を運転資金として1000万円の融資を受けた場合。融資が入金された預金口座から1000万円以上の支払いがされたことを入出金明細で確認されたことをもって、資金使途どおりに使われたたとみなされます。

こんな場合でも資金使途違反となる。銀行融資で気を付けるべきケース。

会社が意図的に資金使途違反するのは論外ですが、意図的でなくうっかり資金使途違反してしまうこともあるので気を付けたいです。

(1)設備資金の融資が入金される前に購入先に代金を支払う

設備資金の融資を受ける時にありがちなのが、融資を受けるより先に、設備の購入先に代金を支払ってしまうことです。

1月30日 融資審査が通ったことを銀行から言われた。

1月31日 融資審査が通ったことから経営者は安心し、設備の代金1000万円を、たまたま多くなっていた預金から購入先に支払った。

2月5日 融資1000万円実行

このようなケースは資金使途違反とみなされます。なお、全額を先に支払うのではなく、頭金などで一部を先に支払う場合も同様です。設備資金の融資が入金された後、その資金で設備の購入先に代金を支払うという順番、守ってください。

(2)後から必要金額が減少した。

例えば、機械購入資金として設備資金の融資を500万円申し込み、審査が通り融資を500万円受けたが、購入先から100万円の値引きがあった場合。購入先に支払うのは400万円となり、残り100万円を運転資金に回したら、資金使途違反とみなされます。融資申し込みの時の設備の見積額から値引きがあったのなら、融資の審査中や、審査がおりても融資実行前に銀行に相談してください。

賞与資金や納税資金など、特定の目的に使う運転資金でも同様です。後で必要金額が少なくて済むことが分かったら、融資の審査中や、審査がおりても融資実行前に銀行に相談してください。

(3)設備の購入先から後で返金された。

設備の購入先で見積書を水増しして作ってもらい、銀行から設備資金の融資を受け、購入先にその金額を振り込んだ後、購入先から一部を返金してもらい運転資金に使う。このようなことを考える経営者も世の中にはいます。

ある経営者は機械を購入しようと見積りしてもらい、機械の金額は200万円となりました。しかしこの機会に運転資金も手に入れたいと考えた経営者は、購入先に頼み、見積書を500万円で作ってもらい、銀行に提出し、設備資金の融資を500万円受けました。

1週間後、購入先から500万円-200万円=300万円の返金をしてもらい、その300万円は運転資金に使いました。次の決算で、その機械の金額が200万円しか計上されていないことを不思議に思った銀行員は、経営者を問い詰めたところ、このような事実が発覚し、資金使途違反とされてしまいました。

この場合、融資を申し込む時、設備資金200万円、運転資金300万円として資金使途を伝えれば問題ありませんでした。銀行に資金使途をウソをつかないようにしましょう。

(4)決算書の貸借対照表の貸付金勘定などが増えた

運転資金として融資を受けた場合にありがちなのが、社長や関係会社への貸付金や仮払金などに回ってしまうケースです。融資を受けた後の日に作られた決算書の貸借対照表で、社長や関係会社への貸付金などが増えた。例えば次のようにです。

2020年3月期決算の貸借対照表の貸付金勘定 0円

2020年10月に運転資金として融資実行 2000万円

2021年3月期決算の貸借対照表の貸付金勘定 1000万円(貸付先は全て社長)

この場合、融資の一部を社長への貸付に回したとして、資金使途違反として銀行や信用保証協会から見られることがあります。

運転資金として受けた融資は、仕入や諸経費の支払いなど、会社が事業を行っていくにあたっての支払いにあてなければなりません。貸付金などが増えているのが融資実行後の決算書で分かったら、融資で得た資金を会社の運転資金に使わず貸付金に回した、と見られてしまいます。

実際に融資で得た資金をそのまま社長などへ貸し付けたのではなくても、事業活動の中で会社から社長などへの貸付金が増えていったら、融資で得た資金が数カ月かけて結果的に社長への貸付金に流れていったと見られてしまいます。このようなことで資金使途違反とみなされることもあるので気を付けなければなりません。

銀行融資で資金使途違反したとみなされてしまったらどうすべきか

資金使途違反を行ったとみなされたばかりに新たな融資が受けられず苦労している会社は多いものです。資金使途違反した会社であるとみなされている状態を脱するには、資金使途違反した融資を一括返済するしかありません。一括返済するには多額の資金が必要となるので簡単にはいきません。

銀行に融資を申し込む時に伝えた資金使途を軽く考えてしまう経営者は多いものです。気を付けてください。