手形割引(でんさい割引)とはどのような融資なのか

手形割引とは、企業が売上を上げ、売掛金を現金ではなく売上先が振り出した手形で回収した場合、その手形を銀行に買い取ってもらうことで資金調達する方法です。買い取った手形は、銀行が支払期日に取り立てて回収します。しかし不渡りとなった場合、銀行は回収できず、手形割引を行った企業に、出した資金の返還を求めます。支払期日に回収となるまでは手形割引を行った企業に融資を行っているのと同じで、手形割引は融資の1つの方法となります。

手形割引は、商売上で受け取った手形を割引するため、「商業手形割引」と呼ぶこともあります。でんさい(電子記録債権)も手形と同様、受け取った企業は割り引くことができます。仕組みは手形割引と同じのため、ここでは手形割引と同じように考えてください。

手形割引は融資の一つですが、貸借対照表の借入金として計上されないため、借入金の金額が増えず、他の融資方法より財務内容が良くなる、というメリットがあります。また手形を買い取った銀行が、支払期日に取立てすることにより返済となるため、企業は返済を行う必要がないというメリットもあります。

銀行から見ると手形割引は、買い取った手形を支払期日に取り立てることで回収できるため、他の融資方法より回収できないリスクが少なく、行いやすい融資方法です。

手形割引では銀行はどのような融資審査をするのか

手形割引を行った手形が不渡りとなった場合、割引を行った企業は銀行に対し買い戻し義務があります。それは手形割引を開始するにあたり銀行と交わす「銀行取引約定書」に書いてあります。

銀行は、割引を行った手形が不渡りとなった場合、割引を依頼した企業に資金がなく買い戻しできなければ貸倒れとなってしまいます。そのため、銀行は手形割引を行うにあたり、その企業が、手形割引を行った手形が不渡りとなった場合に買戻し能力があるかを審査します。

また手形割引では、手形割引を行う企業だけでなく割引する手形を振り出した企業の審査も行います。手形を振り出した企業は、不渡りになる可能性が高い、つまり手形を決済できない可能性の高い支払能力の低い企業ではないか、審査されます。

(例)
A社は300万円の商品をB社に売り、1カ月後、50万円を現金で、250万円をそこから3カ月後決済のB社振り出しの手形を受け取った。

A社は手形250万円を早く現金化したく、取引銀行のC銀行で手形割引を行った。
(事前にC銀行はA社の買戻し能力とともに、B社が手形決済できず不渡りを出す可能性が高い会社かどうかも審査します)

支払期日にC銀行は手形をB社に取立て、250万円を回収した。

 

審査が通ったら銀行で手形割引を行えます。はじめのうちは手形割引を申込む都度、審査される形が多いです。

銀行に対し信用をつけていければ、この金額まではいつでも手形割引できるという極度額を設定してくれます。例えば手形割引極度額 3000万円で銀行の審査が通れば、 3000万円までは自由に手形割引できるようになります。しかし、極度額の範囲内であればどの企業が振り出した手形でも必ず割引できるわけではなく、手形を振り出した企業の信用状況によっては手形を割引できないこともあります。

手形割引して得た資金の使い道

本来、売掛金の回収は現金で行えれば資金繰り上よいのですが、売上先との取引条件により、手形で支払われることもあります。手形のままでは現金として使えないため、手形割引により現金化を考えたいです。また、このような商取引の流れの中で手形割引を行うため、割り引いて手に入れた現金は運転資金として使うべきです。設備資金として使うべきではなく、設備資金が必要ならあらためて銀行に融資を申し込むべきです。

手形割引と他の融資方法との優先順位について

手形割引は融資の4つの種類(証書貸付・手形貸付・当座貸越・手形割引)の中で、銀行としては最も行いやすい融資方法です。そのため、手形を受け取っても割り引かず手元に置いておき、運転資金は銀行から手形割引以外の融資(証書貸付・手形貸付・当座貸越)で受けることで確保することが理想です。手形割引はいつでも行いため、万が一の時に手形割引を行うことで資金を確保できるようにしておく、ふだんの運転資金の調達は他の融資方法を優先させる、という考え方です。

手形割引はどのような費用を銀行に支払うか

なお手形の割引料は、利息と同じ考え方をします。手形を割引した日から手形の支払期日までの金利を、割引料として銀行に支払います。

(例)
300万円の手形を割り引き、80日後に決済、金利1.5%

3,000,000円×(81日/365日)×1.5%=9,986円 が割引料となり、割引を行うと同時に割引料を銀行に支払います。なお割引した当日も割引料計算に含めるのが通常で、利息計算は80日+1日=81日で計算します。