どのような会社が銀行から融資の金利引き上げを要求されやすいか
既存融資の金利引き上げを銀行から要求されることがあります。業績や財務内容が悪化している会社と、融資の返済を継続することが困難となり銀行にリスケジュール(返済の減額・猶予)を依頼した会社が、金利の引き上げを銀行から要求されやすいです。
融資が将来、返済できず貸し倒れとなってしまったら、銀行は損失を被ります。その損失を補うのは、銀行が融資先企業から得ている利息収入です。業績や財務内容が良い会社であれば貸し倒れとなる可能性が低いため金利は低くてよいのですが、逆の場合は貸し倒れのリスクが高い分、銀行は金利を高くしたいと考えます。このようなことから、業績や財務内容が悪化した会社、リスケジュールを銀行へ依頼した会社へ、銀行は金利を引き上げることを要求してくるのです。
銀行が融資の金利引き上げを要求してきたら企業はどう対応すべきか
業績や財務内容が問題ない会社へは、多くの銀行が融資したいと思っています。そのような会社に対し銀行から既存融資の金利引き上げを要求してくることは少ないですが、もし要求してきた場合は断ればよいです。銀行が金利引き上げをしつこく言ってきたら他の銀行に借り換えすればよいため、金利引き上げを断れば収まるものです。
一方、業績や財務内容が悪化したり、リスケジュールを銀行に依頼したりなどで、銀行から金利引き上げを要求された場合。このような会社はどこの銀行も新たな融資を行おうとは思わないものですから、金利引き上げを言ってこない他の銀行に借り換えするという手は使えません。銀行としては、金利引き上げが嫌であれば全額返済してもらってかまわないという姿勢で、金利引き上げを要求してきます。
次が、金利引き上げを銀行がせまる言い方の例です。
「御社は信用格付が下がりましたので、金利を引き上げてもらわねばなりません。」
「御社は赤字です。黒字になったら金利は引き下げますから、今回、金利を引き上げさせてください。」
「リスケジュールを行うにあたり、融資の金利は引き上げさせてもらいます。」
このようなことを言われると、金利を引き上げなければ銀行から全額返済をせまられると恐怖を感じ、多くの会社は金利引き上げを受け入れてしまいます。
なおここでの金利引き上げとは、固定金利の融資の金利引き上げ、もしくは変動金利のベースとなる金利の引き上げのことです。
例えばある融資を「短期プライム―レート+0.125%」の変動金利で借りたとします。銀行の短期プライムレートが1.500%であれば融資の金利は1.500%+0.125%は1.625%となりますが、短期プライムレートが1.750%に上がったら金利は1.750%+0.125%=1.875%となります。
この場合、ベースとなる金利である短期プライムレートが上がったから融資の金利が上がっただけです。金銭消費貸借契約書には、銀行は融資崎企業の承諾を得なくても短期プライムレートが上がれば連動して上がると記載されています。変動金利ですからこれは受け入れるしかありません。
問題は「短期プライムレート+0.125%」の0.125%の部分を銀行が引き上げようと要求してくる場面です。この「+0.125%」の部分はスプレッドと言います。例えばこの場合、スプレッドを0.125%から0.375%に引き上げるには融資先企業の承諾が必要です。この金利の引き上げ要求に対し、どう対応していくか考えねばなりません。
金利引上げについて金銭消費貸借契約書や銀行取引約定書を読むと、次のような記述があります。
「銀行または債務者は、次のいずれかの事由がある場合には、相手方に対し利率を一般に合理的と認められる程度のものに変更することについて協議を求めることができるものとします。
1.金融情勢の変化その他相当の事由がある場合
2.債務者の財務状況の変化、担保価値の増減等により、銀行の債権保全状況に変動が生じた場合」
銀行はこのような条項を根拠に、金利の引き上げを要求してきます。しかし銀行は金利引き上げの協議を求めることはできても、一方的に金利引き上げを融資先企業に約束させることはできません。銀行からの金利引き上げの要求は断ればよいです。
銀行からの融資金利引き上げ要求を断っても企業が取り組むべきこと
ただ、銀行からの金利引き上げ要求を拒否すると言っても、会社の業績・財務内容が悪化したことや、リスケジュールを銀行に依頼したことが金利引き上げを銀行が要求してきた理由であり、問題点が消えるわけではありません。今後どう経営改善していくか銀行に説明した上で、既存融資の金利を引き上げずそのままにしてほしいと銀行に協力を求めたいです。経営改善をどう行っていくか銀行に説明するため、経営改善計画書を作りたいです。
経営改善計画書とは、今後5~10年程度の損益計画と、その計画を達成するための行動計画を書いたものです。黒字化実現や、利益を増加させていくためにどう経営改善していくかを書かねばなりません。
業績や財務内容が悪化したり、リスケジュールを銀行へ依頼したりすれば、銀行がその会社に対して出している融資の貸し倒れリスクは高まります。リスクの高さに見合った金利としたいために銀行は金利引き上げを要求してきます。経営改善していき業績や財務内容を良くしていくこと、リスケジュールを行っても将来、返済を再開するために経営改善していくこと。これらを経営改善計画書に書き、銀行に提出、説明することで銀行を安心させる必要があります。
なお経営改善計画書の中の損益計画では支払利息も計上しますが、今と変わらない金利で計算した金額で計上します。経営改善計画書を銀行に提出するにあたり、金利が変わらず支払利息が増えないことを前提として利益が上がっていくことを銀行に示し、金利を引き上げないよう主張したいです。