銀行から見て、ある会社に融資を受けてほしい場合。一方、その会社としては当面、資金を必要としない場合。銀行が考えるのは、借り換えでの融資を提案することです。

例えばA銀行で残高1500万円、金利2.0%の融資を返済中とします。B銀行はその会社に融資を受けてほしく、2000万円、金利1.5%での借り換えを提案します。「うちの銀行で借り換えてくれれば金利が低くなりお得ですよ。」と提案してきます。

金利を低くしてでもB銀行はその会社に融資を受けてほしいです。その会社としては資金を現在、必要としなくても、借り換えであれば今ある融資を、金利を低くして借り換えられるということで融資を受けようという気になります。B銀行としても単発で融資を行う場合に比べて借り換えの方が融資金額を大きくできます。B銀行としては単発での500万円の融資よりも、A銀行の融資の借り換え分を含めて2000万円を借りてくれた方が融資金額を大きく増やせます。

企業側としては、B銀行の提案に乗って借り換えを行うことにどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

他の銀行の融資を借り換えるメリット

  • 今ある融資を低い金利で借り換えられる。
  • 今の融資が複数ある場合、借り換えにより一本化することで融資の本数を少なくでき、場合によっては毎月の返済金額を少なくすることも可能。
  • B銀行へ借り換えることで借り換えされる方のA銀行との取引をやめるのであれば取引銀行を集約でき、自社の事務を効率化できる。

他の銀行の融資を借り換えるデメリット

  • 借り換えされる方のA銀行との関係が悪化する。
  • 借換えされる方のA銀行との取引をやめてしまえば取引銀行の数は少なくなり、今後、融資を受ける銀行の選択肢は少なくなってしまう。
  • 借り換えされる方のA銀行がメインバンクであれば、借り換えることによってB銀行がメインバンクとなるが、B銀行が今後、メインバンクとして自社に対し融資を積極的に行ってくれるかどうか未知数である。

他の銀行の融資を借り換えることのデメリットは無視できない

ここまで他の銀行の融資を借り換えるメリット・デメリットを見てきましたが、最も気になるのは、借り換えされる方のA銀行との関係が悪化することです。

A銀行としては、その会社との取引を解消しようと元々考えていたのでないかぎり、自分の銀行の融資を他の銀行に借り換えられてしまうことにいい気はしません。その会社に裏切られた、という感情がわくこともあります。結果、その会社への融資はその後、消極的になってしまうことも多いです。このように考えると、他の銀行の融資を借り換えることは、借り換えられる方の銀行から今後は融資を受けなくてもよいのではないかぎり、行うべきではありません。

しかし、B銀行からのせっかくの提案をムダにしたくない場合。この例で言えばB銀行は2000万円を融資することでA銀行の1500万円の融資を返済しましょうと提案していますが、B銀行からすれば2000万円の融資を受けてもらえればその資金でA銀行の1500万円を一括返済するかどうかはどちらでもよいはずです。借り換えしようとしなかろうと、B銀行としては2000万円の融資を行うことに変わりないのですから。借り換えではなくB銀行から単に2000万円の融資を受けるのであれば問題ありません。

融資の借り換えを提案してきた銀行は既存の銀行か、新規の銀行か

他の銀行の融資を借り換えるべきではないと述べましたが、次の観点でも考えてみましょう。借り換えを提案してくる銀行、この例ではB銀行が、今までも融資を受けてきた既存の銀行か、それとも新規の銀行か、分けて考えてみます。

B銀行が、今までも融資を受けてきた既存の銀行である場合。借り換えを提案してくるのは、B銀行がその会社に対して積極的に融資を行っていこうとしているからでしょう。一方、B銀行が新規の銀行である場合。その銀行は、帝国データバンクなどの信用調査会社からその会社の情報を得てアプローチしてきているのかもしれません。

既存の銀行と新規の銀行、大きな違いは、銀行がどこまでその会社のことを把握してるか、です。既存の銀行では、その会社に今まで融資してきて、そして返済されてきた実績があります。その実績が銀行に対しての信用となり、今後、多少業績が悪くなったとしても引き続き融資を行ってくれることが期待できます。

一方、新規の銀行では返済実績がなく、信用がついているとはまだ言えません。そのため、今回は融資を行ってもその後、会社の業績が悪くなれば次に融資を申し込んでも審査を一気に厳しくすることも多いです。

他の銀行の融資を借り換えるべきではないと述べましたが、それでも借り換えを考えたい場合。借り換えする方の銀行、この例ではB銀行が、今までも融資してきた銀行か、新規の銀行かによっても違います。新規の銀行である場合、より慎重になるべきです。

同じ銀行内の融資を借り換えるのはどうか

ここまで、他の銀行の融資を借り換えるケースを見てきました。では、同じ銀行の融資を借り換える場合はどうでしょうか。

同じ銀行の融資の借り換えであれば、他の銀行へ借り換えされることによる銀行との関係悪化というデメリットは当然ありません。

しかし、同じ銀行の融資であれば、銀行にとって不利となる借り換えの提案を銀行は行おうとはしないものです。例えば既存の高い金利の融資を、低い金利の新規融資で借り換える提案は行いません。銀行にとってはわざわざ利息収入を少なくすることだからです。

低い金利の融資で借り換える提案を銀行が行ってくることは期待できないため、企業側から積極的に、希望を銀行に伝えていきましょう。新たな融資を金利○%で借りたい、融資の本数を増やしたくないため現在の融資の借り換えも含めて行いたい、という希望です。