事業が赤字で現金預金が減少し、赤字補填のために銀行から融資を受けてしのいだ。しかし、せっかく借りた資金を経営改善による黒字化に生かせず、資金が尽きてしまったもしくは尽きかけている会社が多くあります。

融資を受けると、いったんは多額の預金が預金口座の中にあることになります。そこで気がゆるんでしまう経営者がいます。毎月の損益が赤字でも、現金預金が豊富にあれば資金繰りは回るのですから。

しかし毎月の赤字額は、その分の現金預金が消えてしまうことを意味します。一方、銀行は企業に対し、永遠に融資を行い続けてくれるわけではありません。

銀行が企業に対しどこまで融資を行うのかの目安

 

企業に対し銀行が融資を行うのは、運転資金として月商の3カ月分までが目安です。設備資金は除きます。

例えば年商1億2000万円、12カ月で割って月商1000万円の会社であれば、1000万円×3カ月=3000万円が、銀行が企業に融資できる「総額」の目安です。なおこの金額は1回の融資においての金額ではありません。また1つの銀行においての金額ではありません。すべての銀行を合わせて、融資を複数回行って、銀行からの借入金残高が「総額」3000万円となるまでは借りやすい、ということです。

銀行は赤字補填の融資を行い続けるのに限界がある

あなたの会社の月商と、銀行からの借入金残高(設備資金の借入金を除く)を見てください。銀行からの借入金が月商の3カ月分を超えていれば、銀行はあなたの会社に十分、融資を行ってきたということです。

しかし会社が赤字を出してしまえば、その分の現金預金はなくなります。赤字を出した会社の多くは、銀行から融資を受けて資金繰りをしのごうとします。ただせっかく出た融資も赤字補填で消えてしまいますので、借入金だけが残ります。

そして、さらに赤字を出し続け、そのたびに銀行からの融資でしのいでいけば、借入金は増えていく一方です。

例えば1年で2000万円の赤字を出した場合。現金預金が2000万円なくなるため現金預金の残高を回復するには銀行から2000万円を借りる必要があります。銀行からの融資により現金預金残高は維持できますが、借入金は2000万円増加することとなります。その時点ですぐに経営改善を行い事業が黒字となれば、その後は赤字による現金預金の減少がなくなりますので借入金の増加は2000万円でとどまります。しかし経営改善を怠って1年ごとに2000万円の赤字を出してしまい、5年間同じことを繰り返せば2000万円×5年=1億円もの赤字となり、それを全て銀行からの融資で補填したら1億円もの借入金となります。

しかし銀行は、永遠にその会社に融資を出し続けられるわけではありません。例えばこの会社の年商が1億2000万円、月商1000万円であるとします。上記で銀行が企業に融資を行うことができるのは運転資金として月商の3カ月分までが目安と述べました。銀行は融資を総額2000万円~3000万円までは出すことができても、そこからさらに融資を増やすことは難しくなってきます。赤字を出し続ける会社に対し、銀行はいずれ融資を出さなくなります。

なお粉飾決算により黒字に見せて銀行から融資を受けている会社もありますが、黒字に粉飾しようが実際は赤字であり現金預金が減少することには変わりません。赤字補填のために融資を受け続けていれば借入金がふくらんでいく一方となり、やがて銀行からの融資は止まります。

銀行は赤字補填の融資を受け続けていればやがて会社は破綻(はたん)する

もしあなたの会社が赤字を続け、そのたびに銀行から融資を受けて補填していても、いつまでも銀行がお金を貸し続けてくれるわけではないのです。銀行からの融資が止まったときが、その会社の資金繰りが破綻(はたん)する危機です。

この場合、既存の銀行融資の返済を止め(リスケジュールといいます)、一方で早急に経営改善し黒字を出せるようになれば、資金繰りは回るようになります。しかし、銀行が融資を出さなくなってからやっと経営改善を行うのであれば、その時点で手元に資金がないことが多いです。現金預金が少ない状態ではとることができる経営改善策は限られ、ぎりぎりの資金繰りで経営しなければならなくなります。

銀行から融資を受けられているうちに経営改善を行い黒字化すれば、資金に余裕を持った中で経営できたはずです。しかし、銀行から融資を受けられ、預金口座に豊富に預金があることから気がゆるんでしまい赤字を出し続けてしまう経営者が多くいるのが実情です。

あなたが経営者であれば、銀行から融資を受けた結果、現在どうなっているか振り返ってみてください。銀行から多くの融資を受けられて、それで気がゆるんで経営改善を怠り赤字を出し続けていないでしょうか。そうであれば、融資で得た資金の多くが赤字で溶けてしまい、残るのは多額の借入金のみです。

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