銀行から新たな融資が受けられない会社が、一方で既存の融資の毎月返済額が大きく、このままでは資金繰りは破綻してしまう場合。既存の融資の返済を減額・猶予すべきです。これをリスケジュールと言います。

リスケジュールは、金銭消費貸借契約書で約束している返済日・返済額を減額、猶予することですので、リスケジュールしたいと銀行に伝えた場合、できない、と言われ拒否される場合もあります。

リスケジュール交渉を銀行に行った場合、銀行からリスケジュールを拒否されるケースで、よくあるのは次の4ケースです。

  1. 最新の融資実行から1回も返済しないで、もしくは1回(1カ月)しか返済しないでリスケジュールを申し込んだ場合。
  2. 通常であれば審査が通りにくい融資を、担当者や支店長ががんばってくれて審査が通り実行された融資のリスケジュールを申し込んだ場合。
  3. リスケジュールする企業の経営改善の見込みが全く立たない場合。
  4. 銀行員がリスケジュールの稟議書を書くのを面倒くさがる場合。

このような背景で銀行からリスケジュールを拒否された場合どうすべきか、それぞれ述べていきます。

1.最新の融資実行から1回も返済しないで、もしくは1回(1カ月)しか返済しないでリスケジュールを申し込んだ場合。

この状況で銀行にリスケジュールを申し込んだ場合、銀行は「この経営者は、はじめからすぐにリスケジュールするつもりで融資を受けた。」と思ってしまうものです。そして銀行はリスケジュールを拒否します。せめて2回(2カ月)は返済した後、リスケジュールを申し込んだ方が良いです。

2.通常であれば審査が通りにくい融資を、担当者や支店長ががんばってくれて審査が通り実行された融資のリスケジュールを申し込んだ場合。

通常であれば融資審査を通すのが難しいところ、銀行の担当者が支店長に説得してくれて出た融資、もしくは支店長が本部に掛け合ってくれて出た融資。このような融資のリスケジュールを申し込んだ場合、リスケジュールを拒否されることが多いです。

通常であれば審査が通らない融資を「返済は問題なく行われます。」と言って担当者が支店長に、もしくは支店長が本部に掛け合ってくれて審査が通った。それを後になってリスケジュールを申し込まれては、その担当者や支店長は、企業にだまされたという感情がわきます。担当者は支店長から、支店長は本部から叱責されるのをおそれ、そして銀行内の人事評価に響くことをおそれます。そこでリスケジュールを拒否します。

なお時間が経って、その担当者や支店長が別の支店に転勤した後の場合。今の担当者や支店長は、過去の担当者や支店長が進めた融資であることから、リスケジュールを受け入れやすいです。

このような背景でリスケジュールが拒否される場合。返済を行う預金口座に預金残高を置かないようにし、延滞状態を作り返済の引落しがされないようにした上で、粘り強く交渉します。延滞状態であると、銀行はリスケジュールに応じやすくなるものです。

3.リスケジュールする企業の経営改善の見込みが全く立たない場合。

銀行にリスケジュール交渉を行うにあたっては、経営改善計画書を作成し、経営改善し利益を上げていき将来、返済を再開する道筋を銀行に説明します。しかし将来、経営改善する見込みが全く立たない場合、銀行はリスケジュールを拒否します。

将来も返済再開できない場合、銀行は、リスケジュールを行って返済を減額・猶予するより今すぐ回収を行った方が良い、と判断します。経営改善の見込みが立たないと、今後も赤字が続き、会社の財産がより毀損(きそん)していきます。会社の財産が毀損する前にできるだけ多く回収した方が、銀行は融資の回収額を増やすことができます。

どう経営改善していくか、経営者が考えるしかありません。それでも経営改善の見込みが立たないのであれば、今後も赤字を出し続けることは会社を存続させる意味がないので、会社をたたむことも考えなければなりません。

4.銀行員がリスケジュールの稟議書を書くのを面倒くさがる場合。

銀行は、融資の場合と同様に、リスケジュールの場合も、リスケジュールを受け入れるかどうか審査を行います。受け付けた担当者が稟議書を書き、銀行内で何人かに回覧し、リスケジュールの場合は最後、本部(審査部・融資部など)が決裁します。

融資の審査の場合は、審査が通り融資が実行されたら、その融資案件を獲得してきた担当者の業績評価となります。そのため、融資審査の稟議書を書くことのモチベーションは、銀行員は高いものです。

一方、リスケジュール審査は、受け付けた担当者の業績評価になりません。以前にその担当者自らが進めて実行した融資のリスケジュールであれば、むしろ嫌がるものです。このように、銀行員はリスケジュールの稟議書を書くことを面倒くさいと感じるものです。

対策として、リスケジュールを申し込む場合、担当者とその上司、2名を相手に話すと良いです。「今後の返済の相談なので、上司も同席するようにしてほしい。」と伝えれば、上司を同席させてくれるものです。担当者のみにリスケジュールを申し出るのであればその後、放置されるかもしれません。しかし上司が同席すれば、さすがに放置はできないでしょう。上司が担当者に、リスケジュールの稟議書を書くよう促してくれるものです。

また、銀行の支店の中にいる融資係に対しリスケジュールを申し込むのも良い方法です。銀行の中の得意先係(営業係)は、上司や支店長から業績を上げることを求められているので、リスケジュールの稟議書を書くような業績につながらない仕事はやりたくないものです。しかし融資係は業績を上げることを上から求められておらず、リスケジュールの稟議書を書くのも融資係が行う仕事の一つですので、進めてくれることでしょう。

おすすめの記事