銀行に決算書を提出すると、それを見て経営者はいろいろ質問されます。損益計算書についてよく聞かれる質問11個を、想定問答集としてまとめました。自分の会社の損益計算書を見て、聞かれそうなことがあったらしっかり答えられるように準備しておきたいです。

銀行が損益計算書を見て、特に目に付くのは数字が悪化しているところです。売上が下がった、売上高総利益率が下がった、経常利益が赤字になったなど。なぜ悪化したのか理由をしっかり把握しておくとともに、どう改善していくかの対策も答えられるようにしたいです。

売上高についての質問

回答のポイント

売上が下がっている場合、特に銀行はその理由を探ろうとします。経営者としては売上が下がった理由は銀行から聞かれなくても分析しておくべきです。部門別、店舗別、取引先別、商品別などで分け、ここ3~5期の売上高を各期集計し、売上が下がった分野を把握しその理由を分析しておけば、銀行に答えやすいでしょう。

また。売上が下がった理由とともに、どう対策をとるのか答えられるようにします。

銀行「売上は前期に比べ、なぜ下がったのですか。」

回答例1

「主力取引先の一つ、○○社への売上が前期3000万円あったのが当期は2000万円に下がってしまったのが大きな原因です。A社自体の売上が大きく落ちているようです。A社は今後も売上が伸びるように思えないので、新規取引先の開拓を積極的に進めます。」

回答例2

「弊社の売上の2割を占める商品○○の売上が前期2000万円から当期500万円まで下がってしまったのが大きな原因です。○○は前期は世の中のブームに乗って多く売れたのですが当期はそのブームは終わってしまいました。新商品開発を進め、新しい商品を展開し売上の回復に努めます。」

NG回答例

「景気が悪かったので売上が下がりました。」

→売上が下がった理由を分析もせずただ景気だけのせいにしている。

「業界が衰退しているので売上が下がりました。どうしようもありません。」

→売上が下がった理由を業界が衰退しているだけのせいにしている。また、売上を回復させる対策を考えていない。

売上原価・売上総利益についての質問

回答のポイント

売上原価・売上総利益の「数値」とともに、売上高に対する売上原価・売上総利益の「比率」の増減を銀行は見てきます。前の期に比べ売上原価の中で数値や売上高に対する比率が上がっている勘定科目を見て、銀行はその理由を探ろうとします。決算書が出たら売上原価の各勘定科目の数値や売上高に対する比率を見て、前の期に比べ上がっている勘定科目で理由を分析しておきます。また、改善のための対策も答えられるようにします。

銀行「製造原価の材料費が前期に比べ大きく上がっていますがなぜですか。」

回答例

「弊社は材料の5割を○○社から仕入れているのですが、値上げ要請があり材料費が上がってしまっています。材料費の仕入先を分散し、低価格で仕入れられるようにしていきます。」

NG回答例

「材料を仕入れすぎてしまいました。」

→仕入れすぎても在庫として残っていればその分は原価にならない。また、材料費が上がった理由、例えば材料費が値上げされたのか、製品の安売りにより相対的に売上高材料費率が上がったのかなどの分析がされていない。

銀行「売上総利益が前期1億2000万円、当期9000万円と落ちていますがなぜですか。」

回答例

「売上高総利益率(売上総利益÷売上高)は30%を保っているものの、売上高が前期4億円から当期3億円へと大きく減少してしまったのが大きいです。それでも経常利益は黒字なので、これ以上売上を落とさないようにするとともに、新商品を開発・投入し新たな売上の柱を作ることなどで売上を回復させたいです。」

NG回答例

「景気が悪いからです。」

→売上高が下がったため売上総利益が減少したのか、売上高原価率が上がったから売上総利益が減少したのか分析されていない。また、なぜ売上高が下がったり売上高原価率が上がったりしたのか分析されていない。売上総利益が減少した理由を把握していないから、景気のせいにするなどあいまいにしか答えられていない。

銀行「売上高総利益率が落ちていますが、なぜですか。」

回答例1

「弊社は仕入の7割が輸入ですが、円安となり輸入価格が上がってしまったことが大きな原因です。これ以上は円安にならないと思うので、売上高総利益率がこれ以上は下がらないと考えています。」

回答例2

「競合先の○○社が安売りを仕掛けてきて弊社の売上に影響が出てきたため、対抗せざるをえず値下げを多くしてしまいました。売上高総利益率を上げていかないと利益が出ないため、仕入先にも交渉して仕入価格を下げる協力をしてもらいます。」

NG回答例

「材料費が上がったからです。仕方がありません。」

→材料費が上がった理由、例えば材料価格が上がったからなのか、安売りにより相対的に売上高材料費率が上がったからなのか、またなぜ上がったのか分析できていない。材料費が上がったのは仕方がないとして対策を考えられていない。

販売費及び一般管理費についての質問

回答のポイント

前の期に比べ、上がっている勘定科目を見て銀行はその理由を探ろうとします。また、金額自体が多いと特に目につきやすいのは役員報酬と交際費です。決算が出たら前の期と比較し、上がっている勘定科目を見て理由を把握します。また無駄な経費を使っているのであれば、それを削減するための対策を考えます。

銀行「前の期に比べ給与手当が上がっていますがなぜですか。」

回答例

「従業員が前期は10人だったのですが、営業を積極的に行っていこうと営業社員を3名入れました。ただ売上増加に結び付いていないのが現状です。引き続き営業強化していきますが、売上を上げられない営業社員は退職を勧めようと考えています。」

NG回答例

「人が足りず人を入れたので上がりました。」

→人を採用したことの理由とその効果が分からない。この経営者は人が足りなければただ増やせばよいとしか思っていないように見える。

銀行「交際費が年間600万円と多くないですか。」

回答例

「確かに多いです。その多くは私(社長)が使ったのですが、計画を立てずに使ってしまいました。これではまずいと思い、これからは月10万円以内の交際費に抑えます。」

NG回答例

「自分ではそんなに使っているとは思わないのですが。」

→自分の会社の経費も見ていない経営者ということで論外。

銀行「当期は赤字になってしまいましたが、社長の役員報酬は年1200万円そのままですか。」

回答例

「社長として経営責任を感じています。これからの役員報酬は月60万円にします。妻と子ども3人を含めた生活費と、住宅ローンの月10万円の返済を考えると、手取り金額を考えるとここまでの削減が限界です。」

NG回答例

「生活費としてそれだけ必要です。」

→大きく利益が出ている会社であれば役員報酬は高くても問題ないが、赤字の中  で高額な役員報酬を減らせないのは銀行からはとても疑問に思われる。

営業利益についての質問

回答のポイント

前の期と比較し、大きく利益が減少したり赤字転落したりすれば、銀行はその理由を探ろうとします。赤字が続いている場合も同様です。その理由を、前の期と比較し分析しておきます。また、どのように利益を伸ばすのか対策を考えておきます。

銀行「前期の営業利益は1000万円だったのですが、当期は100万円にまで落ちてしまいましたね。」

回答例

「売上が前期2億5000万円から20%落ちてしまったのが響いてますね。売上高総利益率は維持し経費もだいぶ削減したのですが。これ以上、経費は削減できないので、私(社長)自らトップセールスを増やして売上を作っていき、次期は営業利益を1000万円に回復したいです。」

NG回答例

「景気が悪いからです。」

→利益が下がるのは全て景気のせいにする経営者、利益が落ち込んだ理由を全く分析していず対策も考えられない経営者と見られてしまう。

営業外収益・営業外費用についての質問

回答のポイント

営業外収益・営業外費用で特に聞かれやすいケースには、雑収入・雑損失で大きな金額が計上されているケースと、借入金残高に比べ支払利息が大きいケースがあります。

雑収入・雑損失は決算書の勘定科目内訳書の中の「雑益、雑損失等の内訳書」で何が雑収入・雑損失に計上されているかを見て、内容を確認しておきます。

支払利息は借入金残高で割ることで平均金利が計算されます。例えば支払利息600万円、貸借対照表の借入金合計(前の期と当期の借入金を足して2で割って2期の平均借入金を算出することが多い)が1億円であれば600万円÷1億円=6.0%となり、平均金利が銀行の金利相場に比べて高くなり、銀行はその理由を探ろうとします。高利の借入を銀行以外で行っているのではないかと疑います。もしこの方法で計算される平均金利が高ければ、その理由を把握した上で銀行に答えられるようにします。

銀行「支払利息が借入金に比べて多い気がします。前期と当期を平均して借入金が5000万円ですが、250万円の支払利息があり平均金利が5%と高くなっていますがなぜですか。」

回答例

「今は借りていないですが、急に支払いが必要になったことが何回かあり、知人に利息を支払って一時的に借りたことが1年で5回ぐらいありました。弊社の資金繰り管理がずさんであったことが知人から借りざるをえなかった原因です。資金繰りの管理体制を整え、また各銀行に協力してもらい借入して預金を増やし、余裕を持った資金繰りを行っていきます。」

NG回答例

「よく分かりません。」

→決算書の内容を聞かれ、経営者が把握していず答えられないのは、銀行からは決算書に無頓着な経営者と見られ、そんな経営者が会社経営できるのか不安に思われてしまう。その場で分からないことであれば分からないと正直に伝えるとともに、社内で調べ後日回答する、と答えた方がよい。

経常利益についての質問

回答のポイント

営業利益についての質問と同様、前の期と比較し、大きく利益が減少したり赤字転落したりすれば、銀行はその理由を探ろうとします。赤字が続いている場合も同じです。その理由を前の期と比較した上で分析しておきます。また、どのように利益を伸ばすか対策を考えておきます。

銀行「前期は黒字だったのに、今期は赤字に転落してしまいましたね。」

回答例

「売上が前期は1億5000万円だったのが1億円に大きく下がってしまいました。これはまずいと2名に退職してもらうなど経費削減に努めたのですが、赤字に転落してしまいました。次期は黒字に回復できるよう対策を社内で話し合っています。来月の10日までに経営改善計画を作ってお見せします。」

NG回答例

「仕方がないですね。売上が下がり続けているものですから。」

→赤字転落は仕方ないで済まされることではない。赤字が続けば会社は資金不足となり倒産する。赤字であれば理由を分析するとともに対策を考え銀行に伝えたい。

特別利益・特別損失についての質問

回答のポイント

固定資産や子会社・関係会社株式の売却益・売却損、債務免除益など、大きな金額が計上されているものがあれば内容を把握し答えられるようにします。また、なぜ固定資産や子会社・関係会社株式を売却したのか、なぜ債務免除を行ってもらったのか、その理由を銀行は知ろうとするので答えられるようにします。

銀行「固定資産売却損が2000万円計上されていますが、これは何ですか。」

回答例

「○○市に150坪の土地があったのですが、何も使っていなかったので売却しました。売却損は大きく出ましたが、土地の管理が大変で固定資産税も多くかかっていたため売却してスリム化を図りました。」

NG回答例

「○○市の土地を売却しました。会長がやったことなので自分(社長)はよく分かりません。」

→会社内で行われた大きな取引を経営者が把握していないのは問題。